2024
Vol.3
海町と向き合う
12月5日 - 12月22日
【開館日】
会期中の木・金・土・日曜日
【開催時間】
10:00 - 17:00(最終入館16:30)
【出陳作家】
尾仲浩二 Koji ONAKA
関野準一郎 junichirou SEKINO
高橋美則 Minorii TAKAHASHI
坪井明花 Asuka TSUBOI
ベン・シャーン「伝導の書」
海町と向き合う
HOKUBU記念絵画館
「海町」は尾仲浩二が91年 - 93年に三陸地方(宮古、釜石、陸前高田、石巻、気仙沼鮎川、小名浜)を旅した際、港町の穏やかな日常の風景を記録したものです。残念ながら、これらの 風景は東日本大震災でほとんど全てが消失してしまい、"失われし風景"となってしまいました。漁業の町は、もともと東京を中心とした食文化をささえてきました。それは我々の日常生活とともにありました。食材は流通に乗って都会の食卓に並びました。
豊かな自然の中で成長した産物は人間と自然の正しい共存の姿を認識する一つのポリシーともなります。それはグローバリズムに根を下ろす自然破壊や大量消費の社会構造から解放にも繋がります。原発事故によって失われた町もこのつながりと無縁ではありません。東京の電力の大部分は福島の原子力発電所に依存してきました。経済成長ばかりが近代の思想を支配してきました。その思い上がりに「待った」をかけませんでした。芸術もその原因の一つでしょう。
尾仲浩二 「海町 釜石1991年」
芸術の役割の一つは現代社会に内在する問題を問い、世の中にメッセージを発信することです。しかし、表現が政治的だったり過激だったりすると、公の美術館としては取り上げるべきではないという意見もあります。政治的なイデオロギーを公平中立的たるべき美術館に持ち込むことはタブーという風潮が根強いからです。もちろん美術館は一個人の芸術的な野心を満たす場ではありません。とはいえ、これでは芸術的主張が骨抜きにされてしまいます。芸術がいかに大衆の生活と無縁であるかと告白することこそが美術館の問題だった気がします。芸術は実りの多い未来のためにも、大切な自然を守り、社会と人間とを深い絆で連結すべきだと考えます。