2024
Vol.4
都市がくれた夢
7月11日 - 8月11日
呉亜沙「会議」
【開館日】
会期中の木・金・土・日曜日
【開催時間】
10:00 - 17:00(最終入館16:30)
【出陳作家】
呉亜沙 Asa GO
平俊介 Syunsuke TAIRA
中里葵 Aoi NAKASTOU
松井宏樹 Hiroki MATSUI
伝統とつながった幸福のかたち
HOKUBU記念絵画館
かつて大都市の問題は労働者の問題でした。有史以来、日本の都市の人口が10%を越えたことはなかったそうですが、それを解決したのは工業化の進行でした。農業生産力は向上し、都市への移動を可能にしました。都市化に対応した生活環境の整備が、公共の事業として進行し、市民の生活の要求が生まれました。やがて都市の生産力を上げる生活の社会化は公共性にも表れます。選挙権や、義務教育など、伝統の規制から制度へと公共のあり方というものが変化しました。その結果、都市は飛躍的に発達し、人口が爆発した半面で、公害など都市問題が激化し、都市と農村の分裂にも結びつきました。都市という形態の社会化の中では、得てして国の利害から、第一次産業を切り捨てるものだったからです。 社会的な目的が個人的な利益をこえる価値を持ったそんな時代にあっては、人間の幸福はシステム化され、社会的な意識構造の物差しで測られていた気がします。このような論理構造は、人間の思想や、趣味や、学歴にまで干渉して、それをまるでファッションを選ぶことと等価にしたようです。それは学校教育の露骨な干渉をともなうものだった気がします。
もちろん、こういったことは、すべて過去においても、しばしば言われたことかもしれません。それは、その総体を出来合いの幸福という商品にして焦点を合わせることで、具体的な社会の原動力として結集させたのではないでしょうか。それがテレビなどによって拡散されたブランドとなったと考えてみれば、ステータスという一見美しい言葉を使ったとしても、本当の幸福はなおざりされている気がします。つまり、我々は属する共同体との絆を確保するため、社会の歯車となっていたのです。
土地の値上がりは持てる者との格差をますます増長させ、学歴のパイプで上昇する体制にもつながっていきます。ただ、社会的に形成された幸福が決して、人間の自然な産物ではない以上、その機能を維持することは困難かもしれません。こういう方向付けが生み出した豊かさは、人間にとって大切なものではありません。ある社会に限定された幸福は、行動の人格を喪失させるだけです。現に共通の目的への献身と、幸福への熱烈な期待を持った世代は確実に減り、幸福の新たな解釈をはじめているようです。